執筆:八束さん
「ナオコさんっ」
丁度車から降りたところで、ヤヨイさんが駆け寄ってきた。いつになく切羽詰まった様子だ。よく見ると裸足で、衣服も乱れている。
「どうしたの、ヤヨイさん」
「ナオコさん、私、私……」
女子校だからと油断していたけれど、どうやら性別問わず、甘い蜜を啜りにくる虫はいるらしい。
とりあえず落ち着かせなければならない。降りたばかりの車に、再び一緒に乗り込み、震えている肩を抱く。
「どうしたの、何があったの」
言いづらそうにしていたので、乱暴されたの? と訊くと、彼女は小さく頷いた。
「見せて」
抵抗する間も与えず、スカートを捲り上げる。隠すものは何もなく、恥ずかしい部分が露わになる。
「あら、私があげたショーツはどうしたの」
「それ、は……ひっ」
剥き出しの性器にてのひらを押し当てる。すべすべの感触を楽しむように手を動かし、しかし中から溢れてきたものを見逃すわけにもいかない。
「ここをこんなに濡らすような、一体何があったの?」
「何が……い、今でも信じられなくて。まさか生徒があんなことしてくるなんて思わなかったから」
「生徒? それは見逃すわけにはいかないわ。ちゃんと指導しないと。一体誰にされたの」
「それは……」
こんなことをされたにもかかわらず、生徒のことを案じているのだろうか。なかなか名前を言おうとしない。
「わかりません。あまりよく、知らない子でした」
「身長は? あなたより高かった? 髪型は? 学年くらいわかるでしょう、上靴の色で」
「わからない、です。混乱してて、よく、見えてなか……んんっ、あっ、ああーっ」
秘部に押し当てた指を動かしてやる。
「混乱していても感じることはできるのね、いやらしい子」
「違っ……ナオコさんに……ナオコさんだからこんなになってるんです。だって私、まだイってないから……」
イってない。それが何だと言うのだろう。誘惑に耐えたことを褒めてほしいのだろうか。すぐに媚びて尻尾を振る犬も、それはそれで可愛いのだけれど、あいにく彼女には求めていない。
「よかった、もし私以外の前でイっていようものなら、あなたを捨てちゃってたかもしれないわ。他人の手垢のついたものは気持ち悪いもの。今なら私しか見ていないから、思う存分イっていいわよ」
言うなり、ナオコの手に押しつけるように腰を揺らめかせる。まったくこんな淫乱にしたのはどこの誰だろう。すっと手を引いてやると、この世の終わりのような表情をして。
「ヤヨイさん、勘違いしないで。私、まだ信じられないのよ。あなたが嘘を吐いている可能性がないとは言えないでしょう。もしかしたらあなたの方が誘ったんじゃないの」
「違っ」
「あなたの言葉を証明するものは何もない。あなたがここをこんなにしている、ということだけは確かだけれど」
「ナオコさん……許して」
「そんな顔をしないで。大丈夫よ、あなたを捨てたりなんかしない。でもちょっとだけ私にも、心の整理をつける時間が欲しいわ。一度家に戻りましょう。あなたも私も、仕事になんてならないでしょう」
「家……」
「そう、私の家よ。あなたを招待するのは初めてね。十分……十五分くらいかしら。戻ったらまずその身体をきれいにしないと。そしたら思う存分乱れさせてあげるわ、私が」
落胆と安堵が入り交じった表情。スカートを下ろして脚を閉じかけたところを、しかしすかさず制して、より大きく脚をひらかせる。
「ナオコさんっ」
「それまでここ、ちゃんと蓋をしておかないと。シートをよごされたら困るもの」
ナカから零れるほどに脚をひらかせておきながら何故、と、わかりやすく狼狽してくるのが可愛い。無防備にさらされたそこに、ポーチから取り出した口紅の四角いスティックをねじこませる。
「ナオコさんっ、まさか、嘘っ……や、ああんっ」
ぐちゅりと音を立てて、細い筒はあっという間に吸い込まれていく。丁度いいところに当たるように数回回すと、押し出すような動きを見せたから、再びぐちゅぐちゅと押し込んでやる。
「家に戻るまで、我慢出来るわね? ああ、落としちゃ駄目よ。しっかり咥え込んでいて。手を使っても駄目。手はこうやって脚を広げるためにあるの。ほら、集中して力を入れて。これ、私のお気に入りの口紅だったのよ。それをあなたのために使ってあげるんだから。しっかり力を入れて感じるのよ。想像して。私が口紅を塗っているところ。そう、今あなたのここに入っているもの、私いつも手にとって、キャップを外して、唇に宛がっているの。私の唇にふれたものが、今あなたのナカにあるのよ。どう? 嬉しいでしょう? 私にここを舐められているみたいじゃない?」
「やっ、あっ、ああっ、駄目ぇっ、さっきよりももっと溢れてきちゃって。出ちゃう……ああ……」
「当然だけど、家に着くまで勝手にイったりしたら駄目よ」
わかるわよね、と、宥めるように、額に軽く口づける。
ひくひくとスティックが揺れる様は実に卑猥だ。エンジンをかけると、どっと溢れ出てきた蜜がシートをよごすのが見えた。それでも健気に下の口で口紅を咥え続けている。
少しだけ遠回りして戻ろうと思った。