執筆:八束さん
「ねえ、そのままじゃ気持ち悪いでしょう。お風呂入っちゃいましょう」
まだフラフラしている彼女を連れて大浴場に向かう。この時間帯だから、当然、誰もいない。管理人には、理事長特権で根回ししておいた。
「私に洗わせて?」
彼女の手からスポンジを優しく奪い、たっぷりの泡を彼女の身体に纏わせていく。肩、腕、胸、お腹……
「どこもかしこも本当にきれいね」
二人しかいない大浴場に、声が響く。
「ヤヨイさんも洗ってくれる?」
そしてもうひとつのスポンジを手渡すと、ナオコがしたのと同じように肩、腕、胸へとスポンジを這わせてくれる。しかし洗う、とは程遠い力の弱さだ。
「ナオコさんも、本当にきれいです」
「そう? 有り難う」
太腿に差し掛かったところで、すい、と、よけるようにしたのを、見逃しはしない。すかさず、手首を掴む。
「ナオコさん……?」
「一番大事なところを洗い残しているわ」
「えっ……きゃっ」
手からスポンジが落ちてしまったが、丁度いい。ヤヨイさんの手を、局部へと誘導する。
「ナオコさん……っ」
「ちゃんとさわってほしいわ。ここが私の大事なところ」
すり、すり、と上下へ動かす。自分でやるほどの刺激はないが、ヤヨイさんにさわらせている、と思うと、うっとりする。指の震える感触が伝わってくる。
「ねえ、初めてさわってみてどう? 教えてほしいわ」
「きれいです。ナオコさんのここ、とても……」
そのままさわっていて、と言うと、ナオコが手を放しても従順にさわり続けてくれる。そのお返しのように、ヤヨイさんの敏感な部分もさわってあげる。ナオコが手を早めると、その動きに必死についてこようとする。
「ねえヤヨイさん、ヤヨイさんはいつもココ、どうやってお手入れしてるの?」
「どう、って……」
「自分で整えているの? でも自分でやるとどうしても残っちゃう部分があるのよね」
陰毛を指で巻きつけて軽く引っ張ると、ヤヨイさんは恥じらうように顔を背けた。
「私のココ、自分で言うのも何だけど、すべすべして気持ちいいでしょう? IOラインはサロンで脱毛したの。あなたも同じようにしてみない?」
「同じ……」
「って言ってもここからサロンは遠いし、他の人間にあなたをふれさせるなんてまっぴら。だから私がやってあげる。やってあげたいの。どう?」
ナオコと同じ、というワードが効いたのか、ヤヨイさんは素直に頷いて脚を広げてみせた。
一旦泡で陰部をすべて隠すようにしたあと、慎重に剃刀を滑らせていく。
ふるり、とヤヨイさんが身体を震わせたので、「寒い?」と問いかける。もちろんそんなはずはないのはわかっている。泡の中に指を潜り込ませると、すっかり勃起した陰核にふれた。
「やあっ」
「ああ、駄目よ、動いちゃ、危ないじゃない」
「ごめ……なさい」
「それに、何? これ。ぬるぬるの液体で刃が滑ってやりにくいわ。まさかヤヨイさん、感じちゃったの?」
「ごめんなさい」
「いいの、感じやすいのがあなたのいいところだから。でもやっぱり、サロンに行かなくて正解ね。こんな恥ずかしい姿、見られちゃったら大変よ」
「あっ……ナオコさんっ……そこっ、ゆ、び、当たって……ああんっ」
またどっと愛液が吹きだしたのがわかった。
「だから動いちゃ駄目だって。襞が重なってるところって剃りにくいのよ。ほら、あなたも自分でちゃんと持って。広げてて?」
実は剃るにはまったく関係ないが、恥ずかしい部分を自分で広げさせるようにする。とろとろと愛液が零れるのが、ヤヨイさん自身でもわかるのだろう。顔を真っ赤にして身悶えている。
「そう、上手にできたわね。ほら、見て、きれいになったわ」
シャワーで全て洗い流し、つるつるになった秘部を露わにしてあげると、ヤヨイさんがあっと驚いた顔をする。
「ナオコさんっ、ひどいっ」
「ひどい? どうして? こんなにきれいになったのに」
「でも全部剃るなんてっ」
そう、IOだけじゃなく、残っていた毛は全て剃ってしまった。まるで赤ちゃんのようにつるつるに。
「恥ずかしいです。こんな……」
「あらどうして? 誰か見るわけでもなし。私以外。それとも私以外に誰か、ここを見せつけるような相手がいるのかしら」
「いない、です。ナオコさんだけ」
「そうよね、なら問題ないわ。すごく似合ってるわよ。そうだ、また生えてきたら、私が剃ってあげる。それまで自分で剃っちゃ駄目よ」
「はい……」
そして感触を確かめるように、おずおずと自らの陰部に手を伸ばしている。
「どう?」
「すうすうして、変な感じがします」
「変? じきに慣れる……いや違うわね、気持ちよくなるわ」
シャワーを再び掛けてあげる。そして不意を突いて、シャワーヘッドが密着するくらいにまで近づけてやる。
「ひゃあっ、ナオコさんっ、それ駄目っ、やああっ!」
「邪魔するものがないからより敏感に感じるでしょう?」
「やっ、あんっ、あああぁああーっ!」
シャワーの水圧に負けて、ヤヨイさんは絶頂した。
追い打ちをかけるように……自分で作った料理の味見をするように、遮るものがなくなった秘部に唇を寄せる。容赦なく吸い上げると、声にならない声を上げて、またヤヨイさんの身体が激しく震えた。
「あ、待って」
浴場から出て、恥ずかしい部分を散々見せ合ったのに、それでも素早くタオルで隠して着替えようとするヤヨイさんを呼び止める。
「プレゼントがあるの」
タオルを奪い取り、少し脚をひらかせて立たせ、無防備になった股に顔を近づけるようにしゃがみ込む。ヤヨイさんが後ずさるような仕草をしたけれど、尻を押さえて制する。
「何っ……何ですか」
「あなたが私のものだっていう証。つけてあげるから。もうちょっと脚、ひらいて」
「こ、れ……って……あっ」
イヤリングのような要領で、左右の陰唇に、人差し指の長さほどのチェーンがついたリングをつける。左右のチェーンの先にはそれぞれ鈴が。そして二つのチェーンを結ぶ中央には、猫のモチーフがぶら下がっている。
「ラビアリング。かわいいでしょ? このデザインを見て一目惚れしちゃったの。きっとあなたに似合うと思って。猫の目には本物のサファイヤが使われているのよ」
ヤヨイさんの目が戸惑いに揺れている。戯れにチェーンを人差し指で揺らすと、鈴がチリチリと音を立てる。
「実はあなたのココ、剃っちゃったのも、これをつけてあげたかったからなの。やっぱり思ったとおり、きれいな丸みにリングが映えてとても可愛い。どう? 気に入ってくれた?」
「あっ……あ、あ……」
「ふふ、ここは嬉しいって泣いてくれているみたいだけど」
またとろとろと蜜を溢れさせて。チェーンがいやらしく光っている。
「やっぱりあなたの言葉で聞かせてくれないかしら。どう? これ、ずっとつけていてくれる?」
「は、い……つけます。ずっと……。ナオコさんのものになれて、すごく、嬉しい……」
「あなたが来るとき、この鈴の音で知らせてね。そうしたらすぐに愛してあげることができるわよ」
頬を紅潮させて、こくんと頷く。
ふと見ると、太腿を伝い落ちた液体が、足首まで垂れていた。
それには気づかないフリをして、「さぁ、そろそろ出ないと流石に怪しまれちゃうわ」と肩を抱く。返事をするかのように、鈴がチリン、と鳴った。