執筆:八束さん
ナオコが学校を訪れると必ず、ヤヨイさんが理事長室を訪れてくれるようになった。
タタタタタ、と足音が聞こえる。まるでご主人様の帰りを待っていたワンコのよう。思わず唇の端が持ち上がる。
「ナオコさん!」
「あらヤヨイさん、ずいぶん元気そうね」
以前と比べてずいぶん血色がよくなった。けれど今、頬に赤みが差している原因は……
抱きしめて、キスをする。次の行為をねだって絡めてきた彼女の手を、しかしすっと放してやる。
「ナオコさん……?」
「ごめんなさいね、会えて嬉しいのだけど、片付けなければならない仕事があって。ちょっと待っててくれるかしら」
「あ……ごめんなさい。じゃあ私はこれで……」
「大丈夫、すぐ終わるから。そこに座って、お茶でも飲んでてくれる?」
「でも、お邪魔じゃないかしら」
「そんなことない。好きなひとが一緒にいてくれるだけで、嫌な仕事も早く片付けようってエンジンがかかるもの。でも、そうねえ、逆にあなたが手持ち無沙汰になってもいけないし……」
考え込む仕草をしたあと、耳元で囁く。
「ひとりでするとこ、見せてくれない?」
「えっ」
「あれからひとりでするようになったんでしょう? 見てみたいわ。気になってしかたなかったの、あなたがどんな風に私を思ってシてくれているのか。ね、ちょっとだけ、いいでしょう? あなたがイくまでには仕事、終わらせるわ。長い間寂しい思いはさせないから」
躊躇いがちに頷くと、でも従順にスカートをたくし上げて、パンティの中に手を滑り込ませている。
「んっ……あっ……」
最高。自慰している女性を目の前に仕事をするなんて。けれど残念なことに、理事長室の馬鹿でかい机からは、ソファに座っている彼女の……大事な部分が……死角になってよく見えない。
趣向を変えることにした。
こっちにおいで、と手招きする。
ようやく愛してもらえるのか、と期待を込めた目をして彼女がやってくるが、まだもう少しおあずけだ。
「やっぱり近くであなたを感じていたいわ。ねえ、ここで続きをして?」
「ここ、って……」
彼女は戸惑っている。当然だろう。ナオコが指差したのは机の角だ。
「やったことない? この角にこすりつけてオナニーするの」
「そっ……んなこと、やったこと……!」
「そう、嬉しいわ。じゃあ私が初めて見ることになるのね。気持ちいいわよ? ほら、もっと前に突き出して」
「やっ……あっ、ああっ」
彼女の腰を掴んで誘導する。
「ほら、こうしていると私もあなたにふれることができるし。わかる? こうやって動かすの。もっと食い込ませて」
「ナオコさ、ん、こんな、の……っ、恥ずかしい、です……っ」
そう言いながらも腰の動きが速くなっていっている。気持ちいいところがわかったらしい。快感に従順な子は大好き。躊躇いながらも快感にすぐに手懐けられていく様子を見るだけでうっとりする。でもまだ少し、物足りない。
「それじゃあよく見えないわ。スカートで隠れちゃって」
「でもっ……」
「たくしあげて。手を放しちゃ駄目よ。ああ、身体を支えながらだと難しい? だったら口でくわえて。丁度いいわね、あなた、声大きいから」
「ふっ、んっ、んんっ」
もし今扉がひらいたら、入ってきたひとは衝撃の光景を目にすることになる。まぁ鍵はかけているけど。
パソコンを叩きながら横を見ると、パンティがよれて、色が変わってきているのがわかる。
「どう? 気持ちいい? でももどかしくてなかなかイけないわよね。いいわよ、直接擦りつけても」
「ちょく、せ、つ……ひゃっ!」
パンツをずり下げ、躊躇う間もなく、濡れた割れ目を押しつけてやる。ぐちゅり、といやらしい音がして、机の脚に蜜が滴る。
「あっ、ああーっ! ナオコさん! 駄目っ! 駄目えっ!」
柔らかい尻を掴んで揺さぶると、首を激しく横に振って泣き叫ぶ。
「よごしちゃう! よごしちゃいます……!」
「いいの。というより、むしろあなたでよごしてほしいわ。あなたがいないときでもあなたを感じられるように。この部屋いっぱいあなたで満たしてほしい」
「そんなっ……あ、あっ、あっ!」
おそらく高価な机だろうが、ナオコが理事長になる前からあったものだから、何の思い入れもない。
びくびく、と痙攣し、いつの間にかもう、自分で自分の身体を支えられないくらいになっている。軽くイったのかもしれない。
パソコンを端に押しやり、机の上に座らせる。放心状態の彼女はされるがままだ。
「ナ、オコさん……もう、大丈夫ですか? お仕事……」
「ええ。それにやっぱり、こんなあなたを見て仕事なんてしていられなくなった」
本当はやらなければならない仕事などない。
脚を大きくひらかせ、指を入れる。入れた途端にきゅうきゅうと締めつけ、しかも自ら腰を振り出したのは嬉しい誤算だった。
「あら、こんな短時間ですっかり上手になったわね、腰遣いが。自分でいいところに押し当てるなんて」
「だ、って……だってもう我慢できな……あっ、ああっ!」
「ここ?」
「そこっ……そこいいですっ……ナオコさん、の、指当たって……駄目っ、何か変なの……ビリビリするっ……駄目です、ナオコさん、それ以上駄目ぇっ……!」
涙目でいくら訴えられても、やめる気なんて毛頭ない。
「駄目っ、ナオコさんっ、何か漏れそう……漏れそう……!」
「いいわよ、漏らして」
「でも、ここ、よごしちゃ……」
「さっきもいったでしょ、いくらでもよごして、って。ほら、全部出しちゃいなさい」
「あっ……あああーっ!」
ぷしゃっ、と透明な液体が飛び散る。思ったほどの量は出なかったけれど、それでも彼女にとっては十分な衝撃だったに違いない。
「あ……あ、ああ……」
痙攣するたびに、ぴちゃ、ぴちゃ、と、零れた液体が、彼女の太腿を伝って落ち、カーペットに染みこむ。あとでこの染みを見たらきっと彼女は絶望的な表情をするだろう。何て素敵。
「ヤヨイさん」
痙攣がおさまらない彼女を優しく抱き、頭を撫でる。
ふと思い立って、机の引き出しから、あるものを取り出す。丁度首に掛けられるくらいの長さのチェーンがついた鍵。それを彼女の首に掛ける。胸の谷間に鍵を落とすと、そのひやりとした感触に、彼女の肩が震える。
「ナオコさん、これ……」
「この部屋の鍵よ。あなたにあげるわ。私がいないときでも、いつでも入って使って」
「ありがとうございます。でも……」
「そしてここでオナニーして。今、教えたみたいにね。あなたの体液を染みこませて。机も椅子もソファもカーペットも全部、あなたでよごして? そのためにあげるの。だからこれから、自分の部屋でするのは禁止よ。ひとりでシたくなったら、必ずこの部屋にいらっしゃい。いいわね?」
まだ現実に戻りきれていない彼女が、こくんと頷く。
いい子ね、と、抱きしめる。