705と841⑵

執筆:八束さん

 

 

 

 

「ナオコさ……いいえ、理事長」
「ナオコ、でいいわよ。どうせ誰もいないんだし」
 山奥にある全寮制の女子校。親戚が経営しているその学校の理事長の任を引き受けたのは、二年前のこと。理事会などで一ヶ月に一回は学校を訪れなければいけない。億劫になり始めていた頃に、彼女……ヤヨイさんを連れてこられたのはいいタイミングだった。
 ヤヨイさんの息子は島へ預けた。
 ひとりきりで家にいても気詰まりになるだけだ、もっと環境のいいところへ行った方がいいと説き伏せて、この学校の事務職員として彼女を採用した。おかげで、山道を車で一時間の道のりも、短く感じられる。
 彼女を理事長室に招き、『特製』の紅茶を振る舞う。扉に鍵をかけたことに、彼女は気づいていない。
「どう? 学校には慣れた?」
「ええ、いい子達ばかりですし。私も学生の頃、こんな学校に通いたかった」
 彼女ならこの学校にとても合っただろうと思う。出会うのがもう少し早ければ。そうすれば汚らしい男なんかにふれさせなかったのに。
「それならいいけれど。ちゃんと食べてる? また痩せたんじゃないの」
「そんなことないと思いますけど。給食も美味しいですし」
「あなたの言うことは信用できないから。実際確かめた方が早いわ」
「確かめる、って……
 彼女を引き寄せ、膝の上に座らせる。腰を抱いたあと、その手を上の方に滑らせる。ぐっと持ち上げ、おもむろに手を放すと、形のいい胸がぷるんと揺れた。
「よかった、崩れてないみたい」
「そんなとこで……
「あら、大切でしょ?」
 内腿を擦り合わせるようにしているのが見えたので、耳元で囁く。
「私がいない間、ひとりでシてた?」
 びくん、と肩を強張らせたあと、ふるふると首を横に振る。
「どうして?」
「だって、むなしくて……
「むなしい? 私はあなたを思いながら毎日シてたわ。あなたを思い浮かべるだけでとっても満たされた気持ちになった。そんな私もむなしいと思う?」
 首を横に振る。
「私が欲しくない?」
 また首を横に振るだけ。そろそろ可愛らしい声を聞きたいと思う。
「じゃあ言って。どうしてほしい?」
「さわって。ナオコさんにたくさん、さわって、ほしくて……あっ」
 ストン、とスカートを床に落とすと、彼女の見た目からは想像できない、布の少ない刺激的なパンティが露わになった。しかも腰の部分は紐だ。これもあの男に見せるために買ったものなのだろうか。昼は聖母で夜には娼婦を望む、あの男もそういうタイプだったのだろうか。くだらない。
 右の腰紐を解いたあと、気が変わって左はそのままにし、クロッチ部分に指を這わせた。思ったとおり、布越しでも濡れているのがわかった。指が簡単に奥へと吸い込まれていく。
「やっ……ナオコさんっ、あんっ、あっ、あーっ!」
「布越しでさわってるだけなのにそんな声、上げちゃうの?」
「だって……
「直接さわってあげるつもりだったけど、やめちゃおうかしら」
「やだっ……ナオコさん、ナオコさん……っ」
 脚を大きくひらいて、髪を振り乱して泣き叫ぶ。こんな姿、自分以外の誰が知るだろう。職員や生徒たちからは、『優しい事務員さん』で通っている彼女が。厳しい先生達に辟易した生徒が、ノートがないだの落とし物を拾っただのと、たいした用でもないのに話しかけに行っているらしい。そんな、皆の癒やしの存在である彼女が。
 ぞくぞくする。
「じゃあさわりやすいようにして」
 彼女自身に、左の紐を解かせる。床に落とそうとしたところを拾い上げると、彼女が怪訝そうな顔で見上げてくる。その流れでキスをしたあと、半開きになった口に、パンティを押し込んだ。
「んっ……んんんー!」
「さわってほしかったら咥えていて。あんまり声出しちゃ駄目よ」
「ナオコさんっ、やっ、恥ずかし……
「こら、外しちゃ駄目よ。声出して誰かに気づかれる方が恥ずかしいでしょ。今度新しい下着をプレゼントしてあげるから。もっとあなたに似合うものを」
「んうっ……うっ、うううー!」
 声が聞けないのは残念だけど、涙目になって耐えている姿を見るのもなかなかいいものだ。それに彼女には少し、反省してもらわなきゃならない。男を籠絡するための下着を身につけているなんて。
 人差し指と中指でナカを掻き回し、親指で敏感な突起を擦り上げると、身をよじらせて彼女は果てた。潮を吹かせてみたかったけれど、それは次の楽しみに取っておこう。
 まだびくびくと震えている彼女にスカートを履かせ、パンティはゴミ箱に捨ててしまう。その瞬間「あっ」という表情をしたが、すぐに諦めたように目を伏せてしまった。
「大丈夫よ、ここにはスカートめくりをするような馬鹿な男子生徒なんていないから」
 ゆっくりと彼女を抱え起こす。
「あなたがパンティをつけていないことなんて誰にもバレやしないわよ。あなたがお漏らしさえしなければ。さ、部屋に戻りましょうか」