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尚登の日記⑴

執筆:七賀

 

 

 

変化するものが好きだ。例えそれが、自分にとって不利益をもたらすものだとしても。

一月十五日。
新しい仕入れ先を視察した。年端もいかない子ども達が能力検査を受け、今後の使用価値を決定される。その中からさらに選別された子どもを預かり、島へ連れて行く。名前のない子どもは区別がつきにくいし、商品として見ることしかできないので、早く名前がつくことを祈る。

二月四日。
また施設に新しい子どもを三人連れて行った。彼らは兄弟で、親の存在を知らない。けど兄弟という繋がりは危険な結束力を持つ可能性がある為、彼らの記憶を改竄した、と夜に連絡があった。旧型を廃止し、新しいチップの性能を見る最初の被検体になるらしい。ちょっと興味深い。

ここから独り言……
兄弟であることを忘れる。それだけは可哀想だ。血の繋がりは何の役にも立たないが、自分のルーツを辿る最後の糸でもある。最近弟と会わないから特にそう思うんだろうか。島の子どもは皆そうだけど、中でも不憫だと思う。

三月八日。
ずっと気になっていた保険医と初めて寝た。
思ってたより慣れていて驚いたが、時々とても幼くなる。
メモカジヤヒロト。

四月十九日。
弟のチップがまた壊れた。と言うより、壊された。本人にいくら訊いても詳細は分からず、何度も外へ逃げ出そうとする。今日はとうとう隔離され、しばらく学校も行けなくなった。様子だけは極力見に行こうと思う。

五月二十八日。
弟の自殺企図が悪化し、通院が始まった。死を望んでいるのは、最初ナオの方だと思った。けど最近はイオのような気がしている。

六月二十日。
弟の薬は増えたが、医師の調合が良かったのかもしれない。落ち着いていることが増えた。今日も付き添って病院へ行くと、仲良くなったという装具士の青年とずっと話していた。恐らくイオの方が、彼から色々な影響を受けている。
追記弟に付き添うついでに、ヒロトさんに会うようになった。ヤヒロさんの昔話を聞くことができて、彼の好きな物、嫌いな物がどんどん分かってきた。
それはここには書ききれないから、また新しいノートを買うことにする。あの二人が自分の前から消えないうちに、楽しいことがしたいと思う。