両手を合わせて席を立つ。残った皿にラップをかけようと叔父に背を向けた。その直後、体重と熱が一度に襲いくる。
驚いて振り返った際、テーブルにぶつかって水が入ったグラスが倒れてしまった。
早く拭かなきゃ。……そんな思考も、すぐに攫われる。
一季は恒成に抱き締められていた。強く、息もできないほど。
「叔父、さ……っ」
苦しさからもがいてしまう。しかしもがけばもがくほど、自分を抱く腕は強くなった。
「好きだよ、一季」
告白だった。何とも唐突な。……脈絡のない告白だ。
「好きだ。けど、許されないんだよ。誰に言われるまでもなく、自分で分かってなきゃいけないこと。認めたら駄目なことなんだ」
好きだけど、駄目。叔父はそんな言葉を往復している。でも、そんなの……それこそ言われなくても分かってる。だけど、自分を抑えきれないぐらい好きなんだ。水槽に閉じ込められたみたいに苦しくて、必死にガラスを叩いている。
叔父も、本当はそうじゃないのか。例えその好きな相手が自分じゃなくても。
「あれは駄目、これは駄目、って。叔父さんはそればっかりですよね」
子どもの頃から変わらない。過保護というだけじゃなくて、意外と頑固なんだ。彼も、自分と同じ。
「駄目だって言うなら、何でこんなことしてくるんですかっ」
喉が張り裂けそうなほど叫ぶ。すると彼の腕は力が抜け、ゆっくりと垂れ下がった。
「ごめんね。俺が、抑えられないせい……だから」
震えた声。振り返った先には、弱々しい笑う彼の姿があった。
卑怯だ。あれもこれも、そう。全部がずるい。そうやって……自分のことを掻き乱す。
一季は倒れるように恒成の胸に飛び込んだ。
「俺の方がず……っと貴方を想ってたのに、頑張って抑えてました。そう考えると俺の方が我慢強い。ですよね?」
「あはは……そうだね」
「ふふ……っ」
遠慮がちに笑い合う。気まずくて照れ臭い。変な空気感にまた笑った。
そして、自然にキスをした。
「ん……」
こんなこと、ってまた言われるかもしれない。けど、叔父さんは何も言わなかった。むしろ彼の方が積極的に攻めてきて、主導権を奪われる。
許される恋じゃない。誰にも祝福されない。それでもいい。彼と二人だけの世界に行きたかった。後でどんな目に合ったって、“今”が幸せなら……そんな危険な思考に傾きつつある。
やっぱり、愛って人を狂わせるんだ。
「叔父さん……あの樹崎って人は」
「ただの、仕事の付き合い。……なら良かったんだけど、ちょっと事情があってね。俺が少し介入したんだけど、それから変に懐かれちゃってさ。悪い子じゃないんだけど……」
そこまで言いかけて、彼は口角を上げた。
「一季、妬いてる?」
「や、妬いてない」
動揺のあまりタメ語になった一季を、恒成は楽しそうに見つめる。図星だったとはいえ一季の顔は赤すぎた。
「妬いてる一季も可愛いよ」
胸焼けしそうな甘い言葉。一季は顔を隠したい衝動に駆られた。とても身が持たない……彼といると溶けてしまいそうだ。
「叔父さんは……俺だけの叔父さん、ってことにしたいです。せめて、二人のときは」
「あはは、いいよ。俺は一季のもの」
チュ、とまた可愛らしい音が頬に鳴る。ついばむようなキスを繰り返し、恒成の手は一季の服の中へ潜り込んだ。
「一季も、二人きりのときは俺のものだ」
柔らかいが少し固い、ざらざらした舌が肌に滑る。手は下半身に伸び、下着の中をまさぐっていた。しばらくそうして遊んでいたが、下ろす時は一気に、ズボンごと膝まで下ろした。
一季の白い肌が晒される。
「綺麗……隠さなくていいよ」
白い肌は、赤い果実の存在感を高める。恒成は先端から溢れる蜜を勢いよく吸い上げた。
由貴は高い声を出して仰け反ってしまった。気持ち良い。気持ち良すぎて腰が砕けそうだ。
もっと強くしゃぶってほしい。離さないでほしくて、押し付けるように自身の股間を彼に当てた。唾液が両端から零れる。生理的だろうが、涙も溢れた。駄目だと分かっているのに止まらない。
目眩が起きそうな状況で、いやらしい水音だけがぴちゃぴちゃと響いていた。